プロセス革新としてのベンチマーキング

 ベンチマーキングとは、従来の業務プロセスを経営環境の変化に対応できる形に変革するリエンジニアリングを、より確実に実行するための経営革新手法である。業務プロセスの向上を目指すには、まず、環境分析をすることによって、当該業務プロセスに影響する経営環境変化を的確に認識することから始めなければならない。
 競争の激しい現在のような経営環境下にあっては、抜本的なプロセス改革によって、クオリティ(経営の品質)の向上、コストの削減、PDCサイクルの最適化を図り業績向上の達成を目指さなければならない。この場合、部門最適を図るのではなく、全体最適を目指さなければならないから、各部門横断的なプロセス思考が重要な鍵となる。
 従来日本が得意としてきた、「良いものをつくれば売れる」といモノづくり思考「プロダクトアウト思考」では最早通用しなくなってしまった。良いものであるかどうかは、売れたかどうかで判断する「マーケットイン思考」に変わってしまったのである。つまり、顧客が望むもの(顧客価値)を創造する経営が求められている。
 こうした環境変化に目を向けず、旧態依然として「良いものをつくれば売れる」というモノ作り思考から脱しきれず、顧客価値創造型のビジネスモデルに転換できない企業は、日に日に顧客から遠ざかっている。このことに気付き経営革新に成功している外部のベストプラクティスに学ぶというのが、ベンチマーキング手法なのである。
 したがって、ベンチマーキング手法とは、単に成功した企業の業務をまねすることを意味するものではなく、経営環境が変化し顧客価値創造型企業へと変革を遂げなければならないとい認識にたち、それらの企業の業務プロセスを学ぶという思考で挑まなければ、抜本的なシステム思考による問題の解決には結びつかない。
 ベンチマーキングは、顧客にとって価値のある製品・サービスを生み出すと同時に、企業に利益をもたらすプロセスを構築するための手法と捉えることができる。つまり、環境変化の認識と自社のポジションを明確にすることで、業務プロセスの改善ポイントを把握し、社内外の最適な方法から学びとることに意義がある。