バランス・スコアカードの基本的枠組み

 プロセス評価のキーポイントに沿って、プロセスの指標・尺度を設定するためのガイドラインがバランス・スコアカードである。すなわち、財務の視点・顧客の視点・プロセスの視点・学習の視点で、指標・尺度を設定すれば、プロセス要件と重要成功要因に焦点を合わせた指標・尺度体系が設計できることになる。
 また、バランス・スコアカードで設計された指標・尺度群は、インプットからアウトプットに至り顧客満足と財務的成果を生み出す価値提供プログラムを表現していることになる。プロセスの最終目的は、そのプロセスが、経営目標である利益を生み出すことにある。この成果を評価する指標・尺度が、「財務的視点」の指標・尺度である。
 財務の視点を最終目的とするためには、経営活動の対象となる顧客の視点が欠かせない。そのプロセスのアウトプットが顧客ニーズに適合しているかどうかを測定するための指標・尺度が「顧客の視点」の指標・尺度である。そして、顧客ニーズを満たすことにより、経営目標を達成するためのプロセス要件と重要成功要因が「プロセスの視点」である。
 企業の重要成功要因は、組織と人材によって支えられるものであるから、組織としての学習能力の向上が、成長を左右するわけで、人材能力と情報共有・活用システムがかみ合うことによりその質が高められる。具体的には、プロセスのインプットとしての人材と情報の質が決まることになるので、「学習と成長の視点」の判断基準が設定される。
 これらの4つの視点で設定された指標・尺度・判断基準の体系が「バランス・スコアカード」である。バランス・スコアカードは、「学習と成長の視点(人材と情報の視点)」→「プロセスの視点」→「顧客の視点」→「財務の視点」というように、人材と情報というインプットから、顧客に価値を提供し財務的成果を生むまでの流れを表している。
 このように、バランス・スコアカードは、顧客に対する「価値提供プログラム」の適正度を測定・評価するための指標・尺度体系である。バランス・スコアカード導入の項で詳述したように、部門間の調整や各指標間の因果関係など複雑な問題を内包してはいるが、目標と達成手段との間に乖離があれば、顧客へ価値を提供することができない。