米国のリスク管理体制に学ぶ

 日本の危機管理は、米国に比べかなり遅れているといわれてきた。その米国の危機管理は、世界一の多民族国家であるため、国の内外に常にリスクを抱え、その体験からあらゆる対症療法が生み出され、現在の危機管理体制が形成されている。米国人にとってはリスクが存在することは常識であり、その管理は自己責任が当たり前なのである。
 一方、精神面を重んじる日本の社会では、過剰な防衛意識は敬遠される傾向にあった。グローバル化が進展している経済環境の中で、とんだトラブルに巻き込まれかねない状況に目を向ければ、リスクに備えることは当然の流れである。その場合の対策を米国の体制に学ぶことは、リスク管理体制を整えるための早道である。
 米国のリスク管理の手法の特徴は、3つを組み合わせるという形をとっている。第一は、ダメージコントロールである。この手法は、太平洋戦争でのソロモン沖海戦の敗北から学び、戦争に於いて艦船の損傷は避けられないという前提にたち、「トラブル遭遇を想定して、受けたダメージを最小限に止め、いかに早く回復させるか」を予め組織計画に反映させた。
 第二は、リスク・マネジメントである。これはダメージを被りそうなリスクをどう扱うかという方法のことである。リスクを回避するばかりでは、個人も企業も戦うことはできない。特に金融市場のグローバル化が進展しているなか、金銭や財産をめぐる危険を回避することは不可能に近い。このリスクを予め想定して、最小に止めるための手法である。
 第三は、トラブル・シューティングである。これは航空界に定着している言葉で、事故とか問題の個所をズバリ突き止め、事前に対策を講じる手法である。トラブル・シューティングとは、撃つことという意味であり、トラブルを撃つ、つまり、問題を事前につぶしてくこと、これは航空界においては大変重要なことである。
 企業や個人の生活の場にあるトラブルは少なくない。企業の経営活動にとっては、想定されるリスクを常に点検し、事前に対策を練っておくことが求められている。こうした管理体制を整えておくことがリスク管理であるとすれば、トラブルの芽を放置することなく、問題が大きくならないうちに解決しておくというものである。