事業計画への危機管理織り込み

 危機管理の観点からすると、計画は常に複数通り用意しておくことが望ましい。つまり、楽観的、悲観的、中間的な計画である。通常は中間的な計画を採用し、期の途中で環境が当初想定した以上に変化した場合、速やかに切り替える。その際のポイントは、財務管理の「保守主義」の原則に則り、「支出は多めに」「収益は少なめに」を原則とすべきである。
 この点が計画に反映されていれば、計画の実行は弾力的になるが、それでも、計画と実績の差異分析により常にチェックする仕組みが必要である。計画はどんなに綿密に練られていても何らかの形で差異が生じるのは当然であるから、この点に注意をして、計画のターニングポイント(トリガー)を予め決めておくわけである。
 こうしたシステムを整えていても、現実の運用は甘くなることが多く、計画と実績の差異が生じた原因を特定することなく、単に差異を数値で確認するにとどまっている場合が多いように思われる。こうした状況に陥るのは、管理体制が不備であることにも問題があるが、大抵は計画自体がおざなりになっている場合も多いように思われる。
 少なくとも、中間報告の段階では、差異分析を徹底して行い、統制不能な環境変化によるものか、それとも担当部門の能力不足や怠慢によるものかは把握しなければならない。そのためには、過去情報を分析するだけでは不十分なので、日々の業務をチェックする仕組みや報告・連絡・相談が円滑にできる体制を整えておくことが求められる。
 経営危機に陥ってしまった企業は、確かに危機管理体制が整っていないことが大きな原因である。つまり、楽観的なシナリオしか用意していなかったので、環境変化が激しい中での対応ができなかったことが大きな要因ではあるが、設備投資をはじめとする意思決定の甘さが、もろに露呈してしまったというのが本当の理由であることが多い。
 このようにトリガーが予め設定されていない場合、ある現象が生じたとしても、それが一過性の症状であるかどうかも判断できないため、撤退や計画の転換のチャンスを逸してしまい、ますますリスキーなスパイラルに陥ってしまう。特に撤退することには消極的であることが多く、リスクにのめり込むという選択をしてしまう。