1年間で蓄積されたキャッシュフローと短期当期利益剰余金の関係

 この1年間に営業活動で稼いだキャッシュフローから、配当金を支払った残りが短期蓄積キャッシュフローである。要するに、会社の目的である本業で稼いだキャッシュフローの増加は、経営活動で稼いだ現金預金と考えられるから、ここから株主への配当金を支払った残りが本当の意味での1年間のキャッシュフローの蓄積と考えられる。
 もちろん、営業活動によるキャッシュフローの増加は本業によるキャッシュフローの増加とは限らないので、本業によるキャッシュフローの増加、短期収益力によるキャッシュフローの増加によって、1年間に蓄積されたキャッシュフローが増加していることが望ましいのは当然のことであるが、基本的には会社の内部に留保された現金預金と考えてよい。
 なお、厳密にいえば、営業活動によるキャッシュフローに有価証券売却益、投資有価証券売却益、固定資産売却益の現金預金の入金額を加える必要がある。ただし、この場合の金額が小さい場合には、これらを無視しても大勢には影響はない。また、短期利益剰余金は、当期純利益から社外に支払われる役員賞与と配当金を差し引いた金額である。
 これに応答する現金預金等の流れである短期蓄積キャッシュフローであるが、役員賞与は、営業活動によるキャッシュフローの小計を計算する段階で差し引かれている。これは、役員賞与も人件費の一種と考えられるので、この段階で計算されている。短期蓄積キャッシュフローを計算する段階では、どこの区分で計算しても同じことになる。
 短期利益剰余金は、確かに重要な項目ではあるが、それ以上に重要なのは、その蓄積額が現金預金で裏づけられているかどうかである。何故ならば、役員賞与金や配当金は、現金で支払われることが一般的であるから、当期純利益から支払われる役員賞与や配当金が現金預金で裏づけられていなければ、借金で賄われていることになるからである。
 こうした状態は好ましくないことは、感覚的にも理解できるが、現実に行われていることも確かなので、厳に慎まなければならないのだが、損益計算書だけで判断するとこうした誤りを起こしやすいということである。こうした危険な意思決定を防止する意味においても、キャッシュフロー計算書の作成は不可欠なのである。