当期純損失となっているし、営業活動によるキャッシュフローも減少している

 このパターンは、損益計算書上で当期純損失が出ているのであるから、ある意味で経営目標が達成できなかったとみて差支えないだろう。経営活動の失敗に連動してキャッシュフロー計算書で現金預金が減少したと見るのであれば、当然の結果と受け止めることができるので、実感としても納得できる数値であるかもしれない。
 つまり、目標とした経営計画が達成できなかったので、現金預金を食いつぶしてしまったのだから、納得せざるを得ないということになるわけである。このタイプは収益力の低い企業に多く見られる現象であるが、程度の差は千差万別で、新規に事業を立ち上げたときなどもこうした状況になるのはむしろ自然なことである。
 損益計算書上の純利益または純損失は、営業活動によるキャッシュフローとは発生のメカニズムと時期が異なるだけで、経営上の意思決定の結果であるという意味では、必ずどこかでリンクしているはずである。例えば、営業活動によるキャッシュフローが増加している場合は、この現金預金を次期以降の経営活動に活用する。
 その結果、損益計算書上の純利益は増加したが、売掛金や棚卸資産が増加したため、営業活動によるキャッシュフローは減少してしまう。必ずしもこのように単純なメカニズムにはならないにして、損益計算書上の純利益または純損失と営業活動によるキャッシュフローの増減を表面的に捉えて解釈するのは乱暴に過ぎる。
 要はこれらの組み合わせパターンが、経営上の意思決定と相反する形で生じたのか、あるいは予定の行動の結果なのかが問題なのである。その点を見極める眼力がないと、キャッシュフロー計算書は単なる資金繰り表としてしか活用されない。つまり、損益計算書上の純利益が減少し続けているのに、企業が成長しているとはだれも考えないからである。
 ともあれ、このパターンは、損益計算書上の当期純利益はプラスで、営業活動によるキャッシュフローもプラスであるパターン、即ち、年度の利益が現金預金として増加している場合と正反対な現象であるから、一気に純利益のプラスと営業活動のキャッシュフローの双方のプラスを目指すのではなく、どちらかに重点を絞ることが現実的である。