当期純損失となっているが、営業活動によるキャッシュフローが増加している

 (1)当期純損失は大きく出ているが、営業活動によるキャッシュフローが増加しているといったケースの場合は、現金預金の支出が伴わない特別損失や、有価証券評価損、投資有価証券評価損、固定資産売却損、減損損失などがある場合である。これは、損益計算書上では、損失であるキャッシュフローとは関係がないので、マイナスにならない。
 (2)当期純損失は出ているけれども、営業活動によるキャッシュフローが大きく増えているというケースも基本的には、(1)と同様であるが、資金繰りが潤沢であると利益が蓄積されていると勘違いしてしまうことがあり、余剰資金を利用して不動産を取得してしまうというようなことが起こりえる。売上が減少するとたちまち資金不足が露呈してしまう。
 (3)当期純損失は小さいが、営業活動によるキャッシュフローが大きく増えている。これも程度の差だけであるが、経営資源の再配分を誤ってしまい窮地に追い込まれてしまうことがある。特に収益力の低下をカバーするため本業以外の事業に投資してしまうと、逆に本業の資金繰りを圧迫してしまい、身動きが取れなくなることもある。
 (4)当期純損失は大きくでているが、営業活動によるキャッシュフローが大きく増えている。このパターンは景気が落ち込み始めたときの建設業によく見られた現象である。短期資金に余裕がある内に本業の抜本的な立て直しを図らなければ、時間がずれてキャッシュフローも縮んでくることを十分に読み込んでおく必要がある。
 (5)当期純損失は中ぐらい出ているが、営業活動によるキャッシュフローが小さく増えている。このケースは、損益計算書上の純損失とキャッシュフローの対応関係はそれほどイレギュラーではないが、それだけにキャッシュフローの値打はそれほど感じられないかもしれないが、純損失もそれほど大きくないので、経営実態がよく見えるはずである。
 (6) 当期純損失は小さく、営業活動によるキャッシュフローが小さく増えている。このケースは(5)のケースよりもさらにねじれが小さく、損益計算書とキャッシュフロー計算書の関係に違和感がないであろう。いずれにしても(1)から(6)までは金額の大小の問題であり、パターンとしては似ているが、経営者の意思決定と重なると方向が全く違ったものになる。