金融機関対策

 事業計画書を作成する目的はいろいろあるが、結局のところ事業のために投下した資本が確実に回収される可能性を矛盾なく示すことにある。ここで言う資本とは単なる資本の額ではなく、時間的な価値を加味した概念であるが、広い意味では事業の採算性とキャッシュフローの価値を見積もったものであり、投資価値を事前に評価することにある。
 投資は自己資本と他人資本に分けられるが、資金調達という観点から見ると、資本金と借入ということになるので、中小企業の場合は特に借り入れに依存する場合が多くならざるを得ない。したがって、金融機関に対する十分な説明力を備えていることも事業計画書の大きな要件の一つであること忘れてはならない。
 従来の金融機関による審査ポイントは、まず担保や保証人の評価、融資実績、地元での評判などであった。つまり、どれだけ土地や建物などの資産を保有しているかという担保評価が第一であり、それにこれまでの取引状況、そして地元での評判などを総合的に勘案して、融資の可否を決定するという方法をとっていた。
 しかし、現在では従来の担保主義とは違った視点での評価基準で評価されるようになってきた。金融庁から出されている「金融検査マニュアル」が公表され、金融庁の検査官が金融機関の検査を行う際の基本的な考え方や具体的な着眼点が定められた。これにより、金融機関もこのマニュアルに沿って、融資をするかどうかを決めるようになっている。
 従来の審査も決算書の内容を重視していたことには変わりはないが、「担保評価」や「貸出実績」などの評価ポイントが相対的に低下し、決算書の内容がより重視されるようになってきたため、これまでの体制に馴染んできた企業は戸惑っている場合も見受けられが、本来のあるべき姿に戻ってきたと見るべきであろう。
 金融マニュアルには、金融機関の法令順守態勢やリスク管理体制について、信用リスクや市場関連リスク等に分けて、細かいチェックリストが掲載されている。その中には、「企業の技術力、販売力、成長性」、「経営改善計画等の策定」、「貸出条件及びその履行状況」などを十分考慮するよう指示されている。計画書ではこの点をアピールする必要がある。