リスクの総点検

 事業計画書の締めくくりとして、これまでに作成した目標損益計算書やキャッシュフロー計算書などを再検討し、十分な投資効果とキャッシュのリターンが実現できるかを確かめてみる必要がある。このときに入れ替え可能な個所は、紙の上だけのことであるから、売上高も製造原価や仕入価格も自由に書き換え検討することは可能である。
 しかし、現実に新規事業を立ち上げる場合、利益やキャッシュフローが不足するので、これを増やすために売上を上げてみたり、原価の引き下げを行ってみても意味がない。特に売上の実現については、市場や顧客、競合企業の動向などを踏まえて設定した筈であるから、確たる根拠がなければ安易に売上の増加を考えるべきではない。
 そこで、まず検討しなければならないのは、内部的な対応策ということになるのだが、これとても闇雲に費用の削減によって利益の獲得を目指すのでは、随所に矛盾が生じてしまうことになる。既存の企業であれば、これまでの経験則から感度分析により、ORなどを参考にするという手法が無難であると考えられる。
 新規事業の場合は、そうした従来の枠組みを超えたものであると捉えるならば、まず、先に作成した損益計算書とキャッシュフロー計算書をドッキングした形の表を用いて、重要な数値を入れ替えてみることから始める以外にない。エクセル等の表計算ソフトを用いれば、利益やキャッシュフロー等への影響が即座に観測できる。
 ここでまず注目するのは人件費など、操業度にあまり関係がない固定費である。しかし、実際には売上高や総利益の実現と深い関係がある費用も含まれている場合も多いので、慎重にシミュレーションを繰り返してみなければならない。場合によっては、再度市場調査を行ってみるなども検討してみる必要があるかも知れない。
 固定費を入れ替えしてみることで、売上高や総利益にもかなりの影響を見込まなければならないとすれば、設備投資や売上原価の削減も視野に入ってくる。この場合は、設備投資を見直し、自社生産を縮小して製品仕入れや委託生産に切り替えることも重要な選択肢になり得る。いずれにしても最終チェックは綿密に行わなければならない。