キャッシュフロー経営

 キャッシュフロー計算書の重要性は、損益計算書上は利益が上がっていても、その利益がそのまま手元資金の増加となるわけではないということである。「勘定あって銭足らず」というように、売上は確かに伸びているのに、その分売上債権も増加しているため、運転資金がショートしてしまうことがあるからである。
 こうした場合、利益情報ばかりではなく、支払能力を表すキャッシュフロー情報が経営上重要になってくる。キャッシュフロー計算書は、1.企業の現金創出能力と支払い能力を示す。2.損益計算書に示されている利益の質を示す。3.投資とそこから得られるリターンの関係を表す。これが担っている大きな役割である。
 最近よく使われる言葉に、キャッシュフロー経営というのがあるが、これはキャッシュフローを重視した経営ということである。利益は会計計算上の数値であるが、キャッシュフローは、そのものずばり事業の価値を測定・評価するためには、キャッシュフロー重視の経営が重要となる。特にフリーキャッシュフローが重要な指標となっている。
 フリーキャッシュフロー(FCF)=?「営業活動によるキャッシュフロー」+?「投資活動によるキャッシュフロー」=税引き前当期利益?法人税等支払額+減価償却費?運転資金増?設備投資額である。経営者がフリーに使えるということから、フリーキャッシュフローと呼ばれる。財務活動の影響を受けないため、業績評価指標として注目される。
 その理由は、事業へ投下した資金から、最終的にどれだけのフリーキャッシュフローが生み出されたのかを測定し、投資リターンによってその事業の価値を評価することを指しているからである。手法としては、将来のキャッシュフローを、リスクを加味した資本コストで割り引く方法などがあるほか、様々な経営分析指標がある。
 これらは一般にリスクと投資の収益性を考慮した企業価値を測定することを目的としている。したがって、一定期間の収益から費用を引いた利益を算定する損益計算書、一時点の会社の財政状況を残高で表す貸借対照表、期首と期末のB/Sの残高がどのように変動しているかを表したキャッシュフロー計算書が重要な意味を持つ。