実用的なキャッシュフロー計算書

 キャッシュフロー計算書の作成が義務づけられている大企業とは異なり、中小企業の場合は、作成はしているものの実際に活用されていない場合が多い。その主な理由は、毎月作成している合計残高試算表と資金繰り表でだいたい間に合うということのようであるが、その一方で、資金繰り表の作成が結構苦手という企業もある。
 こうした背景には、キャッシュフロー計算書や資金繰り表は、金融機関提出用であり、顧問税理士が作成してくれるものという考えがあるようだ。確かに、経営成績や財務内容を外部に報告することが目的で作られている財務諸表が、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書と考えれば、その作成には消極的になるのかもしれない。
 しかし、経営の実態を常に把握し、適正な意思決定が求められる企業経営においては、作成を義務づけられているという感覚ではなく、日々変化する経営情報をリアルタイムで把握し、適正な意思決定に活用するためのものとして位置づけなければ意味がない。こうした観点に立ってキャッシュフロー計算書を作成しなければならない。
 正式な決算処理用のキャッシュフロー計算書は必要不可欠なものとしても、日常の経理業務では、より短い期間の資金繰り表を使って入金、出金、現金残高を管理しているわけであるから、この業務に沿った形のキャッシュフロー計算書が作成されれば便利である。特に事業計画書においては、簡便化されたキャッシュフロー計算書が作成される。
 この時の簡易キャッシュフロー計算書は、損益計算書を使い、「当期利益」に続いて、キャッシュフローに影響のある数字を記載する。例えば減価償却や売掛金、買掛金その他の増減などである。そうすることで、売上高と利益、投資と借入が表記されるので、その結果としての現金残高が明確になり、経営実態が一目で把握できる。
 細かい数値を正確に記載されたキャッシュフロー計算書は当然必要であるが、日々の営業活動や機械装置などの設備投資の効果測定、財務活動による資金繰りの調整などを大枠で把握していることはもっと大事なことである。この損益計算書とドッキングしたキャッシュフロー計算書は、収支の状況と資金繰りを1枚のシートで管理できる。