販売費と管理費の積算

 売上原価や販売費・管理費は、目標とする一定の売上高を実現するために必要とする費用であり、そのうち売上原価は、原則として売上高の変動によって増減する費用である。一方の販売費・管理費は、一定の操業度を前提にして見積もられた費用であるから、売上高の増減とは直接的には連動しないため固定的な費用として位置づけられている。
 したがって、売上高が一定の許容範囲内で変動している分にはあまり変化はないことになるが、費用対効果という観点から見ると柔軟性に欠けるため、固定費の変動費化などという言われ方がされるほど、見積もりが難しい費用である。しかし、この費用の分類はあくまで会計上の表示であり、多くの企業では売上や利益との対応関係を重視している。
 ただし、全ての販売費・管理費を変動費化するのは困難であり、かつ不合理な面もあるので、業種・業態によりできるだけ変動費化する方法が工夫されている。この考え方の功罪については改めて考えるとして、新規事業を数値で表現するためには、従来の形式にのっとって、費用を積算せざるを得ないのが現状である。
 販売費・管理費は、財務会計ないし税務会計上「販売費及び一般管理費」として、一括りで表示されることが多いが、管理会計的にはこれらを二分して、販売費と管理費に分けて考えるのがより実情に則しているように思われる。この場合、問題となるのは管理活動と営業活動を区分して費用を分解しなければならないことになる。
 原則として販売費は、商品・サービスの販売活動に要した費用であるから、販売手数料、広告宣伝費、販売促進費などが該当する。一方の一般管理費は、旅費交通費、水道光熱費、減価償却費、賃借料、リース料、外注費、業務委託費、租税公課、消耗品費、事務用品費、修繕費、保険料、雑費といった費用がここに該当する。
 損益計算書の費用項目からいうと、先に算出した人件費(役員報酬、給与、諸手当、福利厚生費など)は、この一般管理費に該当することになるが、実際には販売員の給与が管理費であることに違和感を覚える。役員報酬にしても然りで、一定水準以上の売上を実現するための費用は、会計上の勘定科目とは別に変動的費用として扱うべきものである。