期待値分析

 期待値とは(予想される結果×発生確率)の総和である。例えばサイコロを何度も振れば、出る目の平均値は限りなく3.5に近づく。この場合1?6の目が出る確率はそれぞれ6分の1であるから、その平均値は3.5ということになるため、ある特定の数値を多く(少なく)出るようにコントロールすることはできない。
 リスクや期待値は、このようにその発生についてコントロールできないものもあるが、回避することが可能なものもある。勉強することで志望校に合格できる期待値を高める可能性があることや、喫煙と肺ガン発症率の増加なども期待値あるいはリスクをコントロールできる可能性が高いものとして位置づけられる。
 糖尿病予備軍の患者の場合、肥満度を10%改善した場合、3年後の糖尿病発症率は45%から20%にダウンするが、逆に肥満度が10%増加すると、発症率は45%から55%へと高まるという。これに着目して肥満というリスク・ファクターをコントロールすれば、糖尿病患者の発生を防止でき、結果として医療費の支出を押さえ込むことかも可能になる。
 リスクや期待値がコントロールできないものしては、天候や為替リスクなどがその典型であろうが、直接コントロールできないというだけで、傘をもって出かけるとか、自国の通貨建て取引を行うなど、事前に何らかの対策を講じておくことでリスクを回避することは可能である。この時に生じる負担がリスク・プレミアムである。
 このような形でリスクを回避ないし低減する手段は、普段あまり意識していないかもしれないが、だれでも常に活用している。例えば、会社の給料が安いのでどこかに移りたいと思っていても、そうすることによって給料が上がる確率と下がる確率を考えた場合、現状で我慢することを選択しているというのも、リスク回避手段を講じていることになる。
 つまり、期待値分析というのは、リスクや期待値があらかじめ把握できれば、より確かな予防策がとれるが、これが不確実な分だけリスク・プレミアムが大きく見積もられることになる。したがって、企業経営における期待値やリスク分析は、これを掴まえると同時に、リスクを回避するために講じる費用を最小にするための情報を集めることでもある。