設備投資の意思決定

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 設備投資を考える場合、その投資によって得られる(増加する)利益と投資金額の回収速度を比較して評価を行う。したがって、この場合の耐用年数は税法に定められている年数と一致するとは限らないが、従来は、有形固定資産の耐用年数を見積もるというより、税法で規定している耐用年数表に記載されている年数を使用してきた。
 税法上の耐用年数は、その資産の耐用年数というよりは課税することが目的であるため、企業が所有している資産の実態と必ずしも整合性があるとは限らない。企業が資産の使用目的に合わせて耐用年数を決めると、税務上否認され調整が必要であるなど、処理が煩雑になるため、税法上の耐用年数を便宜上適用することが慣習化している。
 経済状況の変化が激しく、消費者の需要もめまぐるしく変化する時代には、有形固定資産の陳腐化が早まっている。また、収益構造の変化などで税法上の耐用年数では投下資本の回収が十分見込めないという場合もある。設備投資の失敗が資金繰りに悪影響を及ぼし、経営危機に陥ってしまったとい例はかなりの数に及んでいる。
 設備投資をしなければ増分のキャッシュ・フローは期待できないが、投下資本の回収が不十分であると、財務活動によるキャッシュ・フローに依存する割合が高くなるため、十分回収ができる見通しを立てなければ、設備投資に踏み切るべきではない。更に、設備投資に偏り過ぎ、運転資金の拡大に対応しきれなく場合もあり得る。
 その他、設備投資の当初の事情と、その後の状況の変化により、設備が機能的に陳腐化し、事実上遊休資産化してしまうこともあるなど、投資の意思決定は経営の硬直化を招く虞もあることから、営業キャッシュ・フローとのバランスに着目して、回収速度のチェックをしなければならないため、その評価の測定は大変難しい。
 投資には設備投資だけではなく、子会社への投資や有価証券の買い入れ、M&Aなどもある。これらの投資は、投資の意思決定によって生じる付加原価(他の投資で得られる可能性のあるキャッシュ・フロー)にも気配しなければならないので、フリー・キャッシュ・フローといえども、ある種の制約条件があることも忘れてはならない。