バランス・スコアカード導入後の検証

 バランス・スコアカードを設計する過程で、経営戦略を業績評価指標間の因果関係に注意を払ってきたが、事後検証においてもその因果を実際の数値を分析してみる。試行導入の過程では、まだ情報システムが導入されていないので、試行対象事業の企画担当者が作成した指標の実績値を採取して、あらかじめ設定した計算式に基づいて検証が行われる。
 業績評価指標の実績データが蓄積されれば、各視点および業績評価指標の実績値の時系列データを単純に線形回帰の相関係数を取るだけでも、ある程度の相関関係は把握できる。なお、その際には最終的にはバランス・スコアカード上で採用されなかった指標についても、候補として挙げられたものは、数値データとして採用し相関関係を検証しておくべきである。
 例えば、財務の視点として売上高を大きく取り上げたが、回収率は取り上げられなかったとする。この場合には売上高の達成度が基準値に達していたとして、実績を評価したとしても、最終的な利益ないし利益率にはそれほど大きく貢献していないと言ったことはよくある。このような場合は、売上高と回収率の相関がマイナスになっていることもある。
 業績評価指標に関する実績データがデータベースに蓄積されていれば、データベースから、あらゆる作業で集められた各指標のデータを、表計算ソフトにより時系列に並べ、相関関係を検証することが可能になる。ただし、相関分析だけでは第3の因子が介在している可能性もあるので、各指標間の相関関係を判断するのは危険な場合もある。
 しかし、当初導入した時は、戦略マップ上の業績評価指標の相関を想定いていたはずであるから、それが実際にどのようになっているかを検証してみるというのは当然のことである。業績評価指標の実績データと、バランス・スコアカードの設計過程において予想した指標(アウトプット指標とプロセス評価指標)についても検証できる。
 これらの関係についても、本来は1対1の指標間だけではなく、重回帰分析を行うことにより複数の指標間の影響を調べるのが本来の姿である。このようにして、各指標間の相関関係を明らかにする意味においても、バランス・スコアカード設計に先んじて、業績評価指標(候補)の重みを主成分分析により測定しておくことが望ましい。