バランス・スコアカードを作成してみる

 これまでのステップを踏まえ、バランス・スコアカードを完成させるには、「視点の定義」「視点内(間)・業績評価指標間のウエイトづけ」「基準値の算出」「業績評価基準の設定」「スコア算出方法の定義」などを改めて行わなければならない。すなわち、スコアを記入するためのモノサシにメモリを刻み込む作業を完成させなければならない。
 バランス・スコアカードの基本形は、財務的視点、顧客の視点、「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という4つの視点であるが、これに企業が独自に設定する視点を加えることがある。しかし、少なくとも試行段階においてあまりコリ過ぎると、評価が複雑になるので、取りあえず単純なウエイトづけで導入してみるのが無難である。
 ただし、バランス・スコアカード導入の最終目的は、その導入によって経営革新を目指すわけであるから、導入ありきではないことも確かである。財務目標の達成が最上位にあることは、バランス・スコアカードを導入しなくても変わりはないはずだが、従来のような売上至上主義では、達成が困難であることに気づいたという動機があるはずである。
 ということは、売上高よりも利益を生み出すアクション(プロセス)に高いウエイトをかけるのは当然である。経営分析を行う際費用の性質と重みを解析してみると、売上高に貢献している費用と利益を生み出すために重要な費用が明らかになり、利益を犠牲にして売上獲得に奔走していたという経営姿勢が浮き彫りなることもある。
 こうした場合などは、明らかに財務の視点内における業績評価指標のウエイトを大幅に改定しなければならないことがはっきりしている。こうした事実を確認しながらバランス・スコアカードを作成することにも意義があるので、業績評価指標の設定およびそのウエイトづけの理由を説明することで改革のメッセージにもなる。
 このように、視点間や視点内の指標間のウエイトづけを行うに際して、一定の法則があるわけではないが、ウエイトとして表すことで、経営トップの経営革新意欲やミッションを示すことができれば、組織の行動規範もおのずから明らかになるという効果も期待できるので、「経営の見える化」への取り組みと見ることもできる。