社内FA制度の運用

 社内FA制を運用するにあたって、資格要件、申告方法、申告のタイミング、宣言の公開、採用面接といったプロセスを経ることになる。まず、明かにしなければならないことは、申告要件の設定についてである。具体的には、申告の資格要件を設ける場合と、特に設けない場合があるが、現状としては、資格要件を設ける企業が多いようである。
 次のステップは、申告方法のルールの設定であるが、異動申告の希望は、直接人事部に申告し、所属の上司を経由しないというのが基本のルールである。申告内容は、希望職種、職務経歴や実積の記述書、自己PRなどを提出させる。そして、求職者の情報を、求人を行っている部署に提供することになるが、この時点ではまだ守秘義務が課せられている。
 また、FA宣言のタイミングをどの時点で行うかも問題である。一般的には、異動希望の3か月前が妥当といわれているが、実際の申告者に関して、どの範囲まで情報開示するかという限定公開範囲も決定しなければならない。当然異動先には公開することになるわけであるが、その場合でも、秘守義務が課せられるべきである。
 次は、実際の採用面接である。異動希望先の部門長は、求職者が、希望する人材として最適がどうか、徹底して質問を繰り返すのは社外からの求人面接と何ら変わりはない。そして、その結果を踏まえ、ニーズにマッチした人材であると判断した場合に、人事部に対して採用決定通知し、異動が決定されることになる。
 社内ばかりではなく、社外にも通用する市場価値の高い人材を育成することに注目が集まり、社内FA制の意義は大きいといえるが、社内FA制による新しい仕事に見合ったやり甲斐や処遇制度が構築されなければ、社内FA制度の真の意義が貫かれたことにはならない。誘因と貢献のバランスは、社内FA制においても基本である。
 更には、FA申告をした社員に対して、それなりの評価をする風土がなければ、優秀な人材を確保することも難しいし、社員にとってもFA制度のメリットを十分に活用できない。例えば、FA申告した社員が所属する部署の上司が、いやがらせをするといったことがあれば、社員はFA申告を躊躇することになるであろう。