社内FA制度の形

 社内FA制度の形は、大体次の3つのパターンに分けられる。一つは社内オープンマーケット型、二つ目は専門性対応型、そして三つ目はHPI型である。社内オープンマーケット型とは、社内の異動のメカニズムを自由競争化したものである。この場合、社内求人の告知は人事部が行わず、各ラインに任せるという方法をとる。
 例えば、ある部署で人材が必要になった場合、具体的に欲しい人材像と仕事の内容を、社内共有の求人情報に関する媒体を活用して告知するという方法である。そして、その告知に対して求職する社員は、所属する上司に報告する必要はなく、直接求人を出している部署との面接を進めていくというスタイルをとるというものである。
 このように、社内オープンマーケット型が、必要な人材を社内労働市場から調達する方法であるのに対して、専門性対応型は、これをさらに進めて社内だけではなく、社外の労働市場に対しても同じ内容の告知を行うことで、社内外完全オープンマーケット型にしてしまうという方法であり、より開かれた形の制度である。
 社内外完全オープンマーケット型は、ある特定の業界あるいは専門性の高いスキルが要求される職種で、労働市場が成熟化している場合に採用されるもので、流動的で売り手市場になっている場合などに用いられる方法である。最後のHPI型(High Potential Individiual)は、幹部候補生を発掘するために行われる方法である。
 赤字部門の立て直しや新規事業の立ち上げなど、困難が伴う仕事を対象に、求人を行う場合などが考えられるが、それだけにリスクも大きいが、成功すれば会社の中核を担う存在として期待されることになるので、個人のキャリア形成にとっては大きなチャンスとなることもあり得る。やり甲斐、生き甲斐刺激型とも言えるかもしれない。
 この3つのタイプの中で最も先駆的な手法が社内外オープンマーケット型である。新事業の立ち上げや事業開発ビジネスプランを提案できる人材を社内だけではなく、社外からも求める仕組みは、今後益々普及するものと思われる。こうした制度の導入は、伝統的な終身雇用制とは相いれないかもしれないが、キャリア形成のチャンスは確実広がってくる。