社内FA制度

 社内FA制(Free Agent)とは、社内公募制ともよばれ、特定の職務に就く人材を社内で公募する仕組みのことである。つまり、一定の条件を満たした社員を対象に、上司の承諾を得ずに希望した部署に異動の申告を出すことができる制度である。これまでも、新しい事業を立ち上げる場合などに必要な人材を公募する求人型の社内公募制はあった。
 しかし、社内FA制は、この社内公募制をさらに発展させたもので、具体的には、社員自らの意思でやりたい部門に直接応募し、部門のニーズにマッチすれば、その部門に異動することができる。つまり、従来の社内公募制では、会社都合にウエイトが置かれていたのに対し、社内FA制は、社員の希望に重点を置いたものである。
 社員本人の異動に対する希望やこれまでの実績、経験、スキルなどと異動先の上司がその人材を必要とするかどうかさえマッチすれば、市場原理に基づいて社内の異動が決められるという制度である。この求職型の仕組みは、社内でキーとなる人材の中でも特に起業型人材や専門性を武器とするプロフェッショナル型の人材開発に役立つ。
 社員本人の異動希望が重視されることで、個人の専門性や創造性を発揮できる機会や場を社員に与えることができるため、人材の最適配置や最適活用が可能になる。また、社内において人材の流動化が発生し、結果として組織の活性化につながることになるほか、社員にとっても、自分のキャリアプランを自らの考えでデザインする風土が醸成される。
 このように社内FA制は、自立型人材の育成には有効な制度であるが、一定以上の規模の企業でなければ導入しにくいというデメリットもあるが、中小企業が導入する場合でも、人材マネジメントのあり方を評価する仕組みとして活用されるメリットもあるため、社内活性化のために、敢えて類似した制度を導入する企業もある。
 具体的には、社内評価の高い人材は、部下にいつ移動申告を出されるかという心配があり、所属部門の人材マネジメントに気配りしなければならない。即ち、優秀な人材を部下に持った上司の人材マネジメント能力評価基準ともなりえるわけである。疲弊した人事制度に喝を入れる意味でもメリットは大きいものと思われる。