モラール・サーベイ

 モラールとは、勤労意欲(労働意欲)、士気などと訳されている。職場の労働条件や労働環境、人間関係、帰属意識などに影響されて生じる従業員の意識を指している。モラールと似た言葉に「モチベーション」があるが、モチベーションというのは、人が行動を起こすときの動機、いわゆる「やる気」を意味する言葉で、個人の意識に属する概念である。
 モラールも、「士気」「やる気」などと訳されているが、語源はフランス語で作業意欲という言葉も使われている。集団のメンバーが協働を通じて人間的満足を得、その集団に帰属することに誇りをもって団結し、共同して目標達成に努力しようとする心理的態度を意味する。つまり、集団的な感情や意識に対して使われる概念である。
 モラール・サーベイとは、組織・職場管理に対する従業員の態度や満足度、問題意識などを調査するための方法を総称する言葉で、一般的には、管理監督者の態度面や仕事の環境面、人事評価や異動などの定量化しにくい人事管理面を中心に、アンケート方式による調査やテスト法、行動観察法(職場実態調査)などの方式で実施する。
 モラール・サーベイを行う主な目的は、労務管理上の問題点を見出し、職場や諸制度の改善に生かすことである。また、何らかの経営政策を実施した場合、その効果を客観的に把握し、軌道修正に役立てようという狙いで実施する場合もある。日本では、昭和30年に日本労務研究会が「NRK方式モラール・サーベイ」を開発したのが始まりとされる。
 その後、厚生労働省方式、労働科学研究所方式、世論科学協会など、各機関が独自の方式で実施している。モラール・サーベイでは、働く者の意識を正確に把握することが大切であるため、一定期間、同じ業務に従事している状態が続いており、仕事になれた期間、かつ、仕事に対するやる気が大きく振れる可能性の少ない時期に行うことが望ましい。
 さらに重要なことは、モラール・サーベイの受け手である社員の気持ちに十分配慮することである。社員は、モラール・サーベイを行うことで働きやすい職場づくりを目指していると受け取っているからである。したがって、モラール・サーベイを行った結果が改善につながっていないと、今後は正確なデータが得られにくくなってしまう。