なぜ仮説が必要なのか

 仮説とは何か、仮説思考とはどういうことかと改まって聞かれると戸惑ってしまうが、実は私たちは仮説の中で生きているといっても過言ではないほど、仮説を繰り返しながら行動している。つまり、試行錯誤の連続で行動を起こしているわけであるから、ビジネスにおいては、顧客をうまく説得するためには仮説が欠かせない。
 また、日常の生活でも何となく要領がよく、勝負ごとにも強いといわれている人がいるが、これらの人は慨していうと仮説力が優れている人である。もちろん、直観力や感性なども影響しているので、仮説力だけでは説明できない部分もあるが、逆に、仮説思考が乏しければ、持てる感性も十分に活用できないことは確かである。
 説得力や提案力、調整力などは、仮説を立てる場合には欠かせない論理的要素であり、仮説を立ててこれを指針に実行し、その妥当性を検証するというサイクルを回すことにより、より精度の高い仮説が生まれる。このように、仮説力が優れている人は、与えられた情報を加工・分析しながら仮説を立てるという仮説思考でものごとを考える人なのである。
 したがって、仮説思考とは「ヤマカン」や思いつきで行動指針を決定するわけではなく、論理的な根拠に基づいて、最適と思われる意思決定をしているのに、意思決定が迅速であるという特技は、時として「いい加減な決定」と評価されることもある。これは仮説思考の乏しい人の評価軸によるミスジャジであるといわざるを得ない。
 しかし、経営上の意思決定は時間との戦いでもあるので、結果論をこね回していれば勤まる評論家とは異なり、限られた情報の中から有用と思われるものをチョイスして、迅速に意思決定しなければ、もっと大きなリスクを背負うことになる。この迅速で精度の高い意思決定は、仮説思考に基づくものであることは明らかである。
 仮説力の乏しい人は、「説得力がない」「提案力が弱い」「顧客の課題を把握できない」「思い込みや偏見が激しい」「了見が狭い」などの特徴があり、よく言えばガードが固く、守り型の職務には向いているとしても、革新的思考様式が育っていないため、組織の目標を達成するための推進力にはなり得ないタイプである。