仮説・検証モデルを自分の中に構築する

 企業経営とは経営理念や経営者の価値観をベースにして、経営目的を設定することにより、これを実現するための仮説を設定することにより着手される。この仮説は実際に経営活動を実行する過程で、当初目指した目標とのギャップを検証する。これがいわゆる仮説・検証モデルであるが、営業マンの目的行動も概ねこのモデルに従って行われる。
 具体的には、まず与えられた情報あるいは検証可能な経営情報と、細分化され自分個人に配布された目標との間に存在するギャップを認識することから始められる。すなわち、自分の目標を達成するための課題は何か、そしてこれを解決するための戦略を所与の情報を元に構築し、この戦略に基づいて行動指針を立てるわけである。
 設定された目標と日々の営業活動によってもたらされた成果を比較することで、その差異を分析し、当初設定した仮説の妥当性を検証する。つまり、自分の経験により構築されているデータベースを改定しながら、概念化能力を高めていくというプロセスを辿りながら、課題解決の手法をより有効なものに仕上げていく。
 このときに用いられる手法としてKJ法などがあり、樹形図にまとめて問題の因果関係を明らかにすることが必要となるが、このときに重要なことは、目標と実績の差異をまず数値で捉え、その背後にある状況を推定するというアプローチをすることである。この検証がおざなりなものになると、再構築する仮説も的はずれなものになる。
 優秀な営業マンは、打たれ強く忍耐力があるという共通点があるが、それ以外にも戦略シナリオを再構築することに、勢力的に取り組んでいるという特徴がある。そうなると差異分析による仮説の検証にとどまらず、キーマンの価値観の把握など日常の商談の中でヒントを見つける努力を粘り強く続けているはずである。
 こうしてみると、まず情報ありきではなく、自社の経営目標、自社の強み、課題解決に向けての動機づけなどにより裏打ちされた仮説力が統合化されていることが、仮説・検証モデルを機能させるためには不可欠な要件であるといえる。しかも、このサイクルは回さなければ、軌道修正も出来ないので課題解決に近づけることも出来ない。