競合他社との親密度を尋ねる

 個客に対する一社のシェアが100%であることは通常はありえない。どんなに品質が優れていたとしても、特殊の事情がなければ数社と取引関係があるのが自然であるが、現在の個客シェアが自社にとって最適であるかどうかを把握していることもめったにない。しかし、現実には何らかの意味でバランスが保たれている。
 この個客シェアが自社にとってばかりではなく、他社にとっても適正であるのか、更に個客の課題解決のために最適であるかどうかは解からない。現実的には、個客の購買力の強さで納入業社のシェアが決定されていることもあるだろうし、その逆で納入業者の販売力や総合力が大きく影響していることもあるかも知れない。
 そのほかにも、複雑な事情が絡み合っているものと思われるが、ファイブフォーセス分析を行ってみると、必ずしも理にかなったシェアになっているとは限らない。それは、自社と競合他社との関係から見てそうだし、個客の課題解決という視点で見ても明らかに不合理であると判断せざるを得ない分析結果になることも多々ある。
 新規顧客獲得を目指している場合でも同じことで、現在の個客シェアがどのような要因によって形成されているのかを知ることは、その後の提案にも大きく影響すると考えられるので、競合他社と個客との親密度を調べてみる必要がある。この点について、営業マンの認識を尋ねてみると、情報量としてはかなりのものを持っている。
 しかし、それらの情報は断片的な知識に過ぎず、肝心の業界要因を描ける情報としては活用できない。つまり、これらの情報は、個客の課題解決のために自社あるいは自分がどのように貢献できるといういわば自分の課題解決のために収集した情報でなく、雑音に近い形で耳や目に飛び込んできたものであるからである。
 自分の動機に曇りがなければ、競合他社との親密度を尋ねて見る方法は幾らでもあるはずで、場合によっては面談の際にストレートに尋ねても礼を失することはない。この関係を念頭におきながら、自社なりの提案をすることこそ、自社の強みを生かすことにもつながり、競合他社に負けない提案ができる可能性も高まる。