予算の大枠を確認する

 営業マンのなかには、いまだに価格競争力が一番の武器だと信じて疑わないタイプがいる。確かにマーケティングは価値の交換を目的とするものである以上、交換価値と使用価値を一致させるためには価格が決め手になることは否めない。しかし、それは価値を共通に測る尺度を金銭に置き換えて価値を測定しているからである。
 本来のマーケティングとは、価格が幾らだから欲しいと思うのではなく、「これは便利だ」とか「これは美味しい」と感じることがまず先行し、その後にこれを購買するための経済的効果という価値観に変っていくはずである。こうした経験則から、お金がないのに欲しがってもしょうがないという意識によってコントロールされているに過ぎない。
 こうした心理に迫るのがマーケティングの考え方であるともいえるわけで、価格が幾らだから欲しいという基本的なスタンスで商品の価値を決めているわけではない。したがって、顧客は日常の生活の中で情報収集することによって、価格と使い勝手という二つの価値の一致点を捜し求めていると見ることができる。
 このように考えれば、顧客が抱いている使用価値とは、課題解決に役立つ価値として位置づけられているのであるから、使用価値が定番となっているもの(例えばカゾリンなどの規格品)の場合は、使用価値に対しては共通の認識を持っているので、価格が唯一の価値ということになり、営業マンは低価格しか武器がないことになる。
 もちろん、こうした定番商品の場合でも、ハード面の価値だけが課題解決に貢献するわけではないから、安定供給や提供方法などに付加価値の重点を置いて評価することもあるとすれば、トータルの提案力が成約の決め手になるであろう。品質が優れているからとか、価格が安いからというのがセールスポイントになる場合は意外に少ない。
 得意先とのヒアリングにおいて、課題を引き出す場合のポイントはまず価格ありきではないが、課題を解決するために必要なコストと、得られることが期待できる価値を解かりやすい情報に組み替えて提案することである。その過程で相手の要求水準と予算の大枠を把握できれば、成約のための条件が絞り込めることになる。