金融機関の企業評価?その2

 債務者区分は前述のように6つ段階に設定されているが、これに対応する形で信用格付けが行われる。この制度は金融機関によって個別に定められているが、基本的には金融庁検査の分類基準である債務者区分にリンクしているため、金融機関ごとにそれほど大きな差はないが、概ね8?12段階に分類されているのが一般的である。
 金融機関は、債務者ごとの信用格付を直近の決算書に基づき、最低年1回更新しているが、会社合併や分割など財務内容に大幅な変更があった場合は、そのつど見直しをしている。そのプロセスは、まず決算書の数値をベースに機械的に定量分析を行い、次に、経営者の資質、係争の有無、業界の環境、協力会社の支援体制など定性的分析を行う。
 実際には、まず債務者区分を決定し、定量評価→定性評価→信用格付の決定というフローで行われる。定量評価の着眼点は、安全性(自己資本比率、負債比率、調達力)、収益性(総資本対経常利益率、総資本償却前営業利益率)、返済能力(借入金償還年数)であるが、このうち自己資本比率と返済能力への配点がそれぞれ30ポイントずつと高い。
 定性的評価の着眼点は、経営者(経営者の資質、経営姿勢、株主の構成、後継者の有無及び資質)、経営基盤(主力商品の動向、需要動向、規制緩和、営業・仕入・管理体制)、資金調達力(主力取引銀行の融資姿勢、資金繰り、債務保証)、係争の有無(労使関係、重大な訴訟、環境問題への対応)、情報開示に対する姿勢(粉飾決算の有無)などである。
 このような着眼点に基づき定量的、定性的に信用格付することにより、引当金の計上等を決定することになるが、債務者区分が要管理先(信用格付8?9)に区分されると、回収・担保の強化という対応に移行せざるを得ない。つまり、債務者である企業は追加融資が必要な状態にあるのに、金融機関は回収や担保の強化を求めるという対応になる。
 債務者はこうした金融機関の対応を非難するだけでは再生を目指すことは不可能に近い。しかし、資産デフレが進行しているなか、従来までの担保主義も過去のものになりつつある。企業の事業力、収益力、キャッシュフロー捻出力などの要素が、金融機関にとっても有力な保全手段になってきているということである。