金融機関の企業評価?その1

 企業を再生するには、経営者自身の意識改革による経営革新が不可欠であるが、取引先、金融機関、従業員、株主などの利害関係者の協力も欠かせない。特に金融機関の協力は最も重要であることは説明の余地はないと思われるが、あまりにも過大に依存しすぎる企業が多く、自社の企業価値に対する認識のズレが温存されていることに気がつく。
 企業再生に取り組む場合、まずこの点の認識を新たにすることが前提である。金融機関の企業評価・貸出審査方法の具体的変化は、自己査定制度の導入と金融庁検査という制度が新たに設けられたことである。その主な内容は、金融機関が自ら資産(貸出金)の査定を実施し、この審査結果に基づき貸倒引当金を計上するものとしたことである。
 更に、金融庁が金融機関ごとに当該ルールが厳格に運用されているか否かを査定する仕組みである。自己査定制度においては、債務者の現況に応じて6つの債務者区分(正常先・要注意・要管理・破綻懸念先・実質破綻・破綻先)を定め、その区分に応じて引当金を計上することとされるため、引当率は債務者区分が悪いほど高くなる。
 上記の区分のうち、正常先は業績が概ね良好であり、財務内容に特別問題がない場合で、借入金の償還年数が10年以内とされている。要注意先は、業績が低調または不安定であって、財務内容にも問題があると認められ、債務超過解消まで2?3年を要するか、または借入金の償還年数が10年?20年を要すると認められる債務者である。
 要注意先のうち、元本・利息の延滞もしくは貸出条件に金利減免の問題がある債務者については、特に「要管理先」として、担保でカバーしていない貸出金の20?30%程度の引当金を計上する。ま破綻懸念先は、現状では破綻状態にはないが、経営の継続が困難な状態にあり、債務超過解消まで5年以上、または借入金の償還年数が30年以上要する。
 実質破綻先とは、法的には存続しているものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しが立たない状態にあると認められる債務者で、多額の不良債権を内包しており返済能力に比べ過大な借入金が残っているため、元本・利息が長期間にわたって延滞している場合の債務者である。破綻先は、当然法的に破綻した債務者のことである。