企業再生の出発点は自社の現状認識から

 これまでは、主として企業が経営困難な状態に陥ったとき、選択し得る再生手法に重点をおき、再生スキームの選択に重点をおいて論述してきた。その理由は、債務過剰に陥っている企業に対して、「諦めるのはまだ早い」とメッセージ送りたかったからである。この願いがどれだけ届いたかは定かでないが、逆にこちらが勇気づけられたのは確かである。
 そこで、これからしばらくの間は、再生支援の原点に立ち返り、企業体質の改革をどのようにして進めるかという「体質改善」の問題に取り組みたいと思っている。これには、まず数値面からの分析と検証から課題の把握に努めることになる。すなわち、「利益構造」「財務構造」「キャシュフロー構造」の3つの構造を明らかにしなければならない。
 会社法、商法、独占禁止法の改正、企業組織再編税制の施行などにより、企業再生がかなり機動的に活用できるようになってきたとはいえ、中小企業経営者からは、相変わらず活用しにくいという声が大きく、一旦債務過剰に陥ると、せっかくの企業価値は一気に毀損されてしまい、再建の意欲が低下してしまったという例も多い。
 民間企業再生ファンドの創設やセーフティネット保証・融資制度なども充実しているほか、中小企業再生支援協議会の機能も強化されているなか、どうして再生がこれほどまでに窮屈なのだろうか。それどころか、現実には不良債権の処理は加速されつつあり、金融機関は、従来にもまして貸出債権を厳格に査定している。
 しかし、翻って考えてみると、融資はそれ自体義務ではなく、査定による決定で契約によって実行されるものであるから、融資元である金融機関を批判しているだけでは何の解決にもならない。つまり、自社の現状、位置づけが甘かったに過ぎないと考えるべきなのである。この点に対する反省がなければ再生は難しいと言わざるを得ないのである。
 経営者が自社の現状を認識するといっても、自社のおかれている環境や自社の強み、弱みを客観的に評価し、今後の取り組むべき課題を正確に把握することはそれほど簡単ではない。これを正しく評価するための方法がいわゆる経営診断ということになるわけだが、これは当然外部の専門家に委託して行わなければならない。