民事再生と事業譲渡

 経営危機に陥った会社が事業を譲渡することを選択する場合、迅速に処理しなければ信用が低下してしまうため、営業権(暖簾)の価値が低下してしまうが、この場合譲渡会社、譲受会社ともに株主総会を開催し特別決議(3分の2以上決議)が必要となるが、民事再生手続きにおいて開始決定後に総会の特別決議に代わって裁判所が許可できる。
 この場合の事業譲渡は、その後に否認権行使の対象になることがないため、譲受会社としても安心である。しかし、任意整理においてよく選択される事業譲渡(第二会社設立による譲渡)は、新会社を設立して事業を譲渡し、既存の会社を清算するという形をとることになるため、債権者に対する法的拘束力は弱い。
 したがって、譲渡価格の妥当性が著しく低い場合などは、事業譲渡が否認される危険性はあるが、柔軟で迅速性があるというメリットは大きいうえ、適正な処理が認められれば、拒絶されることを恐れることはない。要は任意整理であるか民事再生手続きによるかを問わず、合理的な再生計画を立てられるかどうかが鍵となる。
 このように、任意整理は債権者に対して拘束力ないことが最大の欠点であるとは言うものの、任意整理案が妥当なもので、多くの債権者からの同意が得られれば、一部の債権者が強固に反対しても、その時点で民事再生の申し立てを行うことも可能であるため、最終的には拘束力のあるものとして承認されることになる。
 時間との戦いという制約条件を考えると、任意整理は中小企業にとっては棄てがたい選択肢となっているが、債権者に対して説得力のある再生案を提示できる人材や第二会社設立に協力してくれる人材が存在しなければ難しい面もある。実際のケースでは、清算に入る旧会社から配当が得られる場合は殆どないのが実情である。
 中小企業の場合は、実態貸借対照表を策定してみると、売掛金や受取手形、棚卸資産などが帳簿価格を著しく下回る場合が多く、譲受会社の側から見れば当然資産価値を圧縮した形で譲受価格を提示せざるを得ないことになる。ここに生じた差額が債権者のリスクとなるわけであるから、清算会社からの配当はあまり期待できないことになる。