概念化能力を身につけるには?その2

 概念化能力とはコンピテンシーの一要素と解釈しても間違いではないように思われる。こうした前提に立てば、概念化能力を身につけるために特別な手法があると考えるよりも、コンピテンシー・ラーニングの過程で蓄積されていく能力と位置づけ、学習することで概念化能力を身につけるのが自然なやり方である。
 コンピテンシー・ラーニング理論によれば、「経験による学習」「モデリングによる学習」「概念化による学習」を通して、従業員は有能感と創造性を学習していくとされている。第一の「経験による学習」とは、ある活動を実際に行うことによる学習で、講義や討議といった学習よりも実践的経験による学習が主な内容である。
 職場の環境をベースにした仕事で試行錯誤を繰り返しながら、仕事に必要な知識や技術、仕事の段取り、効果的な仕事の進め方などを体験しながら身につけていく。これはOJTやジョブ・ローテーションなどを通じて行われる伝統的な教育・訓練方法などがこれに当たるもので、ここでの学習が基本的なものである。
 第二の「モデリングによる学習」とは、他人の行動や活動の仕方を見聞きしたり、手本となるモデルを見つけ出し、その人の仕事への取り組み方を模倣することで、直接の経験ではない学習により、ノウハウや創意工夫の仕方、仕事への取り組み姿勢などの無形の知識を蓄積していくというものである。つまり、模倣による学習である。
 第三の「概念化による学習」は、獲得した情報や実践的経験を観念的に整理統合し、概念化することによって、絶えず変化する環境に適応する知識や行動を学習する。当然この段階では、「経験による学習」や「モデリングによる学習」などが、フルに活用されることで問題の本質を適正に捉え、最も練られた対処方策が固まってくる。
 このようにして、「概念化による学習」が成熟してくるにつれ、一つの「暗黙値」として確立され、法則性を確立するに至るわけである。これを更に論理的に表現するよう試みることで、「形式値」に変換できる可能性が生じることになる。こうした能力がすなわち概念化能力の威力であり、部門の目標達成活動に大きく貢献することになる。