価値ある情報を選択するためのモノサシ

 価値創造の設計図は経営理念を具体的に図式化したものであるから、経営理念自体をリフォームすることになれば、当然その枠組みにあった設計図に修正しなければならない。これは、経営という仮説?検証モデルを回すことで検証されるべきものであり、新しい仮説が設定されれば、情報選択のモノサシも変わることもある。
 例えば、経営診断に際して行う経営分析でも、業界の枠組みが時代とともに変化していることが確認されることがある。この場合、業界における自社のポジションも変化するわけであるから、そのトレンドを見据えて戦略を再構築する必要に迫られることになるが、これを認識すること自体が情報の収集にかかわる問題である。
 このような場合、従来の枠組み(設計図)に固執していたのでは、競争戦略上遅れをとることはよくあることだ。この設計図を素早く書き換えるということは戦略の転換を意味するわけであるが、枠組みが変わるということはモノサシも変えなければ、価値ある情報を入手・加工することはできないことになる理屈だ。
 管理者に課せられた役割は、現在構築されている枠組みの中で必要な情報を入手するための選択を行う一方、この枠組みの妥当性を客観的に評価するための情報も選択しなければならない。これがいわゆる概念化能力というものであろう。これは経験と学習を積み重ねることでしか身につけることはできないものである。
 職場のメンバーに対するヒアリングにおいても、「対人能力に長けている人」、「概念化能力の優れた人」というのが、よき職場上司に対するイメージのようである。具体的には、部下の話によく耳を傾け、決して自分の価値観を押し付けない。そして、上層部に対して説得力ある提案ができる人、この辺が共通した管理者像であるようだ。
 このように考えてみると、ハッキリとした着眼点と意識的思考に基づいて物事に取り組み、必要な情報をタイムリーに収集するのが管理者である。それには絶えざる革新が不可欠であるのに、漫然と職場経験を積み重ねているだけで学習を怠っていては、概念化能力は育つはずがない。管理者はまずこの点に気づくべきである。