管理者の決めつけが断絶を招く

 上司と部下の間に断絶が生じるのは、部下が目標達成に失敗したときであろう。当然のことながら、上司は目標達成に失敗した責任は100%部下にあると思い込んでいるから、部下のフガイなさを叱責するだけで、失敗の原因を分析するという行動は全く採らない。したがって次期に向けての適切なアドバイスも一切ない。
 こうした状況下で目標管理制度や成果主義給与制度を導入するとどうなるだろうか。管理者は、目標が達成されないのは全て部下に責任があると思い込んでいるから、少なくとも、制度の導入には概ね賛成であるというのが大体のパターンである。しかし、何度かミーティングを繰り返しているうちに態度が変わってくる。
 目標管理制度と銘打った制度は導入していなくても、目標のない会社はないわけだから、目標管理制度を導入したとしても、管理者の職務を確実に果たしていれば、上司に特別負荷がかかるわけではない。増してや部下たちがフガイないのだから、これに喝を入れる制度だと思い込んでいたものだから大賛成なのも頷ける。
 しかし、目標管理制度は、上司には上司の目標が課せられるし、部下には部下としての役割が割り振られることになるから、お互いに自分の目標を達成するのは自分以外にいないことが明確になってくる。こうなると、自分の目標を部下の力によって達成するという従来の構造とは全く違ったものであることに気づくのである。
 このとき初めて、自分はとりなき里のコウモリであったことに気づかされるわけであるが、実はここで気づく管理者はまだ軽症である。かなりの管理者はこの場に及んでも、自分の目標達成を他人に委ね何とか体をかわそうと画策する。かくして、部下は上司の目標を下請けするというゲリラ構造が生まれるのである。
 しかし、目標管理制度はこうした逃げ腰の管理者を見逃さないのである。何故なれば、そうした二重構造では部下に負担がかかり過ぎるから、部門の目標が達成できなくなる。この責任は上司に対する評価となる仕組みだからである。当然部下にもその功罪が及ぶことになるので、こうした上司は耐え切れなくなるのである。