管理者の見識が問われる情報収集・加工力

 部下が上司に求めている最大のものは、情報の提供でることについて述べたが、上司はどのようなスタンスで情報を蓄積しておくべきなのだろうか。種々雑多な情報ではないことははっきりしているものの、それを具体的に捉え整理しておくとなると、それほど簡単ではないはずだが、あまり意識していない管理者もあるようだ。
 特に旧来型の年功序列的管理体制の中に埋没している管理者は、管理者の仕事は部下の怠慢を監視する役割だと考えているようで、部下の仕事をサポートしたり促進するためのリーダーであるという本来の役割を認識していない。こうした長年の習慣がトップからもそして部からも軽んじられる原因の一つとなっている。
 情報は何のために必要かは、自分が何をしようとしているかできまる。したがって、会社の目標は何か、それを達成するために部下たちはどんな活動をしているのかといった思考がなければ、到底部下たちによい情報など提供できるはずがない。つまり、ここでいう情報とは部下の目標達成に必要な情報でなければ意味がない。
 ここを起点に考えれば、その情報源はどこなのか、そしてそれをどのようにして入手するのがよいかにも考えが及ぶであろう。種々雑多な情報もまた情報であるから、これらの情報の中から必要な情報を取り出し、限られた時間のなかでこれを選択し整理しておくことが管理者にとって大事な仕事であることを認識しなければならない。
 さらには、生の情報では直接活用しにくいことの方が多い。これを加工し分析するという高度なテクニックを求められるが、場合によっては複合的に絡み合った情報の中から、必要な情報を取り出すことも管理者に期待される。そして、これらの情報をどのように分類・生理・保管すべきかなども重要な要件の一つである。
 このように情報自動蓄積倉庫としての役割が管理者に課せられた本当の任務であるわけだが、大抵の管理者はそうした認識が薄いにもかかわらず、管理者としての威厳にはこだわり、本来の役割を代行させる影武者的な存在を見つけ出し、本人は鳥なき里のコウモリのように振舞っているが、日に日に居心地が悪くなってきている。