管理者の情報提供力

 企業内において営業拠点を巡回した際に、あなたにとってどのような管理者が理想ですかと質問することがある。管理者が近くにいないことが前提だが、そうした場合によく口にするのが、「情のある人」とか「ハートのある人」、「思いやりのある人」というのが多いようである。中には「情報提供をタイムリーにしてくれる人」というのもある。
 人によってそれぞれ異なるように見えるが、これらに共通しているのは「情」ではないかと思われる。この場合の「情」は人情とか人間らしさといったような意味合いのようであるが、「情」とは情けつまり何をどうしたいかということである。そうだとすると、情報提供をしてくれる人というのが本音のように思われる。
 すなわち、情報提供とは、何をしたいかという問題を抱えている状況下において、その問題を解決するための意思決定を左右するものであるということだ。ということは、部下が上司求めているのは、浪花節的な人情のようなものではなく、目標達成のために役立つ「情報」を適切に提供してくれる人としてみていることになる。
 全く別の話であるが、上司と部下の間には能力の差はない。あるのは情報の差であるとよく言われる。そういいきることが正しいかどうかは判断が難しいところだが、一般的に言って、社内外の情報を入手できる機会は部下よりも多いことは確かである。部下にとってはその情報をタイムリーに提供しもらいたいと願っているわけである。
 多くの情報を掌握していながら出し惜しみをして、部下に権威の差を見せつけようとする上司は部下にとってはあまり好ましくないと映るに違いない。上司が持っている情報は個人的に知りえたものではなく、職務の遂行上必要なものとして入手したものであるから、これを恣意的にコントロールするのは本来ルール違反である。
 更に、管理者は情報を収集し蓄積しておくだけでは不十分で、部門目標達成に有用な情報につくり変えることも職務の一環である。例えば、市場情報や業界情報などを加工・分析して部下に提供することは管理者としての中核業務であるはずなのに、現状はそうしたシステムが定式化されていないため、部下の目標達成活動が円滑に進まないこともある。