部下から一目置かれる管理者

 いたずらに権威を振りかざしたり、無茶な要求をする上司は部下からばかりではなく、同僚からも敬遠されることがある。しかし、よく観察してみると敬遠されるのは、直接的な行為によるよりも、上司としての資質や懐の深さの違いによる場合もあり、部下の受け取り方も微妙に違うので、ここがまた難しいところでもある。
 上司の出す命令や要求がかなりきついものであっても、部下はもんくを言いながらもそれに応えようとすることもあれば、さほど拒絶するような内容でもないのに、そっけない対応をすることもあるのはどういう理由なのだろうか。もちろん主義主張が異なるため、人間的に相容れないという場合だってあるかも知れない。
 しかし、こと企業経営に関してはそれほど割り切って考えられるほど簡単ではないが、そこには何らかの潤滑油的なものが介在しているように思われる。これは言ってみれば、上司の心意気とでもいうべきものなのだろう。少なくとも、中小企業においてはそうした要素が潤滑油となっていることは否定しがたい事実である。
 当然いわゆる仕事ができる上司であると部下から認知されていることは不可欠であるから、マネージャーである以前にリーダーであることも重要な要素である。リーダーシップを発揮するためには、本人の資質ややる気だけではなく、それを受け入れ協働するメンバーが存在しなければ始まらないことを忘れてはならない。
 改革に失敗するケースとしてよくあるのは、自社の生え抜きでは改革を推進するのは困難であると考え、外部から有能と目される人材を登用して強引に進めた結果、角を矯めて丑を殺してしまうようなことである。こうした場合の原因は、論理ではなくそれを受容するメンバーとの現状認識の違いが大きいようである。
 改革とは元々難しいものであるから、多少強引に断行しなければ成功はおぼつかないのかもしれないが、企業には良くも悪くもこれまで築き揚げてきた文化というものがあり、これを無視した改革は、必ず強い抵抗があることは計算に入れておくべきである。これを力ずくでねじ伏せようとするところに拒絶感が生まれる。