報告の必要性

 職場のメンバーに対して、上司から求められる報告が自己統制と矛盾していると思うか」と質問してみると、殆どの場合、報告するのは当然でしょうという答えが返ってくる。しかし、その報告に求められている内容が、形式的で目標達成に役立つ内容ではなかったり、正当な権限に基づくものではないときなどはかなり抵抗があるとも答えている。
 こうしてみると、部下の自己統制を妨げるのは、上下の人間関係によるところが大きく、信頼関係ができていれば、求める報告も客観的に必要と思われるものであれば、部下にもよく伝わるので大きな妨げにはならないし、上司も無意味な報告を求めることはなくなるが、それでは信頼関係だけの問題かというとそうとは限らない。
 権限規程などに定められている規定内容を見ると、なるほど網羅的でかつ無駄がないが、はっきり言って味も素っ気もない。人と人が触れ合う組織に相応しい内容であるかどうかは当事者が身をもって感じている。むしろ、これを盾にとって、部下を適切に指導ができない理由にしている管理者は多いように思われる。
 つまり、上司は職務権限が規程により制限されているため、部下に対して柔軟に報告を求めることができないというのであるが、そこには、上司の権限のみを頼みにする管理行動が見え隠れする。本当の理由は、権威を傘にきて力づくにより部下を従わせようとしていることに問題があるのに、本人は権限が足りないので指導できないと嘆いている。
 具体例で言うとよく見かけるのは、営業部の部課長と部下との関係である。営業成績があがらないのは部下たちの怠慢以外にはないと信じて疑わない上司は、よく部下たちに報告を求めるが、これに対する適切なアドバイスもなければ、営業方針の転換といった方向も全く示さないで、ただ単に叱咤激励するに止まっている。
 上司がハッパをかけるのはある程度やむを得ないが、過去の経験のみを頼りにただ数字を追求するのでは、部下にとっては雑音としか受け取れないであろう。上司が適切でタイムリーな情報を提供することで、部下の行動指針を修正しなければ、ただ闇雲に背中を押されても、競合他社との競争には勝てるはずがない。