リーダーに課せられた使命

 リーダーシップを巡る理論とは別の角度から、リーダーに課せられた使命を考えてみるとどんなことがいえるだろうか。リーダーは複数のメンバーが、ある目的を達成するために集合した組織の指導者ないし推進者と言い換えても差し支えない。そうだとすると、目標達成に貢献するようにメンバーを動機づけ、協働させることが使命ということになる。
 それではその使命なるものが、客観的であるならば、発揮されたリーダーシップも客観的に評価できることになるから、その組織にとって望ましいリーダーであったかどうかは一目瞭然である。企業はこうした経験を仮説?検証モデルを回すことにより、態勢を入れ替えるという営みを延々と繰り返してきたことになる。
 その結果、当社(部門)にとって望ましいリーダーシップ像は明確に定まったのだろうか。ノーと答える企業は結構多いのではないだろうか。そして、その理由は、経営環境の変化が激しいので、固定的にのぞましいリーダーシップを定義することはできないし、変革型リーダーシップを求める当社には相応しくないということになるであろう。
 また、別の視点で企業経営の仕組みをみてみると、株主は資本を経営者層に対して元本の保証と収益の増加を託しているという単純明快な構造になっているにもかかわらず、受託層である経営者に対する評価は、必ずしもこうした評価軸にそって行われるとは限らない。これはエージェントコストを株主がどのような尺度で見積もっているかによる。
 こうして考えてみると、「リーダーに課せられた使命」といっても、結果や成果をどのように評価するかは、恣意的で立場や状況によって異なると見るべき要素が大きいように思われる。企業における管理者のリーダーシップを評価するのであれば、成果を明確に定義し、これを獲得することを契約に近い形で義務づけるしかない。
 更にいうならば、成果を獲得する手段に対する経営者の考え方や経営方針によっても、評価が分かれる可能性もある。例えば、短期的に結果を出すことを使命としているプロジェクトなどでは、職務の遂行によって満足を感じるタイプのメンバーには、時に逆風となることもあり得るなど、立場によって評価がわかれることになる。