変革型リーダーシップ

 リーダーシップの真髄は、部下の価値観、思考様式、部下の態度を変えさせる将来ビジョンを示すことにあるという。これは現在の枠組みを破壊することを意味するものであるから、部下に与える衝撃は大きいと見て当然であり、組織の文化が未成熟である場合は、逆効果になることも考えなければならないことになる。
 経営者層と中間管理者層の思考様式にズレがあると、経営革新が遅々として進まない場合などに起きる現象とよく似ている。リーダーシップとは部下に変革を求める能力があるだけではなく、実際に変革すべき状況にあることを説得する能力と、その手段を適切に選択できる能力を兼ね備えていなければ、リーダーとしての役割を遂行できない。
 また、資質や知識、時代感覚などがどんなに優れていても、部下とのコミュニケーションが劣悪である場合も成果に結びつくリーダーシップが発揮できない。このように考えると、先のコンティンジーシー理論とは違った意味での状況要因も重要であるように思われる。つまり、状況認識においてある種の共通性を持っていることが必須の条件である。
 中小企業の場合は、こうしたミスマッチにより組織がこう着状態に陥り、責任者不在の職場が形成されてしまうことはよくある。最も始末が悪いのは、誰もが被害者で加害者らしきものが存在しない(特定できない)ということである。一歩間違うと良いリーダーと良い部下が協働して組織を破滅に導いてしまうといこともあり得る。
 こうした膠着状態からの脱皮を図るためにも、リーダーシップが必要であるという議論に回帰することになるわけだが、現実に採りえる打開策はそう多くはない。リーダーシップに期待する以前に、リーダーも含めた組織メンバー全員で情報の共有をはかり、何よりも目標達成が組織の成果であることを確認しなければならない。
 次に、その目標達成のためにどう行動すべきかという指針を示し、両者が納得したときに、これを遂行するためのリーダーシップとはどんなものかが議論されるべきである。つまり、どのような目的達成のために、どのような能力が必要で、どのようなリーダーシップが求められるかを見極めることで、初めてリーダー像が明らかになる。