リーダーシップの行動理論

 リーダーシップの行動論では、故三隅二不二教授のPM理論が有名であるが、基本的には仕事と人間の2軸によって分類される理論は数多い。しかし、各論になると微妙に異なる点も見られることから、企業の現場における実際のリーダーのタイプによる行動と、組織の成果との関係を全て説明し切れていないような気がしてならない。
 例えば、高業績部門で見られるリーダーは、従業員中心で全般におおらかであり、部下の失敗や誤りを学習の機会として生かすために支援する行動をとるという。そして、部下がやっている仕事を自分もするというのではなく、監督の役割に徹しているという特長があり、部下もリーダーのはっぱを不当とは思わないという。
 一方、低業績部門の特徴は、仕事中心のリーダーで細かな指示をだし、部下の失敗、誤りに対して批判的で処罰するという行動をとる。また、部下の仕事を自ら行っていることかも多い。こうしたリーダーに仕事のため、圧力をかけられると、部下は不当と感じて反発をするという。しかし、その因果関係にはかなり疑問符がつくように思われる。
 確かに、スポーツチームの監督が多少暴力的でも、フォロワーはやる気を失うこともなく、リーダーの指示に従うという光景はよく見かけるが、そのときのリーダーがメンバー中心なのか仕事中心なのかを判断する基準を明確にするのは難しい。むしろ、メンバー自身が成果を求めて行動する姿勢に左右される面が大きいように思われる。
 また、課題指向と人間指向という2軸による考え方も同じことで、結局はリーダーとメンバーの相性や仕事に対する情熱など、ベクトルが共有できていなければ、両者の思い入れもミスマッチに終始してしまい、お互いの評価は相容れないものになってしまうのではないだろうか。つまり、これらは絶対的な評価ではないのである。
 主成分分析や因子分析により、2軸を明確にすることを試みた場合には、主成分や因子のネーミングに苦慮することが多いのは、やはりこうした理由によるものである可能性が高いと思われることから、リーダーシップを行動論や特性論的アプローチで説明しようとする考え方には無理があるように思えるのである。