評価が適正であるかどうかということは別にして、その評価結果をフィードバックすることは、コンピテンシーを客観的に評価する意味からも有効な手段である。しかし、これにこだわるあまり、本来の目的を見失ってしまいフィードバックするシステムに懲りすぎては意味がない。360度フィードバックなどという考え方は多少行き過ぎの感は否めない。
研究成果には敬意を表さざるを得ないが、現実論としては顧客の評価まで含めるのでは、顧客の事情も考慮する必要があり、かなりバイヤスがかかることも予想しなければならないから適切ではないように思われる。もっとも、顧客の評価は売上高にも直結するので、本来は最も重視すべきであるといえるかもしれない。
しかし、そうだとすれば逆に売上や利益の実現度から逆算して顧客満足を測定し、顧客の評価を推定する方が理にかなっているように思われる。いずれにしても、他人の評価がストレートに能力の向上やその発揮度に結びつく可能性を考えると、フィードバックは、自己評価を修正する手段として位置づけた方が有意である。
中小企業の場合は、上司からのフィードバックもままならないし、例えフィードバックが適切であったとしても、処遇面との関係もあり軌道修正にはあまり役立たないのが現実である。唯一、迅速に反応する可能性があるのは、自身や家族の生活設計と軌道修正のベクトルが一致した場合であり、フィードバックだけでは動機づけが弱いのである。
すなわち、組織目標達成に向けてのコンピテンシーを高めようという動機は、期待理論による説明が一番あてはまりがいいようである。安定や安心が確立されている場合は、自己実現に向けて努力するが、そのレベルが上がっている現在では、ここをキープするために動機づけられる社員も多く存在することを見逃してはならない。
伸び盛りの若年者には、処遇面の改善は大きなインパクトとなる可能性も高いので、フィードバックにより喚起を促すより、期待が具体的に描ける刺激の方が動機づけに繋がるが、中高年にも全く見られないわけではない。フィードバックは将来に繋がる可能性を引き出すものであることが条件であり、決してそれ自体を目的としてはならない。
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