人事評価の評価尺度?その3

 成果主義的給与制度は確かに短期志向で、長期的な視点で捉えなければならない人材育成とは矛盾する考え方を潜んでいるが、単年度の目標達成と人的能力(コンピテンシー)の向上とのバランスをどのように評価すればよいのだろうか。これは、全体の経営戦略の問題でもあるので、各企業が独自に評価方式を決めるしかない。
 例えば、プロ野球などでよく見られる二軍での調整などは、年俸が少ないという評価があるだけであるが、将来の成果に繋がる可能性をかなりあるいはある程度評価していることによるものだが、この可能性もまた測定する一定の尺度が確立されているわけではない。もしあるとすれば、望ましい選手の補強可能性とコストとのバランスである。
 いずれにしても、プロスポーツに限らず、チーム力の強化にはどんな人材が必要で、それを育成するための時間や費用と、それによって得られることが期待される成果をシミュレーションしながら、戦略的意思決定をすることになるわけであるが、長期的な目標の内数である単年度の予算も目標として無視することはできない。
 企業経営における短期の評価と長期の評価は、成果主義人事制度にも反映させなければならないはずなのに、短期の成果を重視するあまりキャリアの形成を疎んじる傾向が顕著になってきていることが、成果主義制度の欠陥として攻撃を受けているようにも見える。しかし、それは制度の設計の誤りによるものである。
 また、成果に結びつく能力を保有していたとしても、必ず成果をもたらすとは限らない。職能給制度における人事考課では、こうした状況が起こり得ることを想定して、これを中間項と称し、成果の評価上カウントしないことにしている。例えば、ホームランバッターであるがゆえに敬遠された結果、ホームランが打てなかったとういう場合である。
 しかし、長期的視点で捉えれば、必要な能力を備えていれば必ず成果に結びつくはずなので、特別に救済策を講じなくても、それほど不合理な結果が生じることはないし、逆に、能力が不足していても、結果が出せる場合だってあるが、この場合もあえて、人力が伴っていないから、成果を割引するというルールもないわけである。