中小企業でも人事考課制度が整っているが、これが正しく運用されているかどうかはかなり疑問な面があるように思われる。各方面から指摘されているように、他社のケースなどを参考に考課表を作成した形式的な産物であるからかもしれない。しかし、それ以外の理由はないのだろうかと考えると、これが必ずしもそうとは言い切れないようである。
例えば、ある企業では、専門家に依頼して綿密に職務調査を行い、職能給制度を導入したが、いざ運用するとなると色々と不合理な面が出てきて使いにくいという。中身を見せてもらうと、微に入り細に亘りで膨大な評価表が用意されていた。これのどこが使いにくいのですかと尋ねると、評価結果が年功序列型のときと全く変わりないというのです。
これを運用する側のスタンスに問題があることも確かである。つまり、人が人を評価するなどということはできるはずがないという先入観があるため、考課を実施しても、やっぱその通りだというとい結論になってしまう。これは心理学でいう「自己成就的予言」というものであろうが、これも原因の一つであることは確かである。
この人事制度を開発するために、かなりの年月と費用を要したことは想像に難くないが、設計する段階で用いた手法が、行動基準評定尺度(BARS)や行動観察尺度(BOS)を参考にしたものだという。これらの手法を正しく活用したかどうかは別として、かなりの労作であることは間違いないのであるが、何故か使えないというのである。
そこで、ここで用いている評定尺度と、会社が現実に求めている評価要素(財務的視点)とのギャップを分析してみることにした。その結果は、ちょうど職能給制度と成果給の評定要素の違いがあることが判明した。価値前提がことなれば、成果に対する評定が異なるのは当然であり、制度の設計の誤りとは別の問題だったわけである。
経営者が考える成果を明確に示すため、成果主義給与制度に移行することを前提にプロジェクトを立ち上げたが、そのときに活用したのがバランススコアカードの考え方である。この考え方は、財務的視点を重視しているように見えるが、共通の土俵で成果を議論するためには、避けてと通れないだけのことなのである。
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