日本における職能給制度の基本は、成績考課、能力考課、情意考課という3つの考課により、評価する人事考課がその根底に据えられていることである。この制度には色々な問題があることは既に指摘したが、とりわけ、評価結果に対する成果と実際にもたらされた配分原資との間に大きなギャップが生じる可能性があることである。
こうした欠点を補うために導入されたのが成果主義制度であるが、これとても、各部門間の整合性がとりにくく、場合によっては成果と昇給の配分原資の関係を説明することができないことも生じる。しかし、これは制度自体の欠陥ではなく、制度の中核をなす「成果」、「成果をもたらす能力」、「成果をもたらす行動」の定義の問題である。
米陸軍行動社会科学研究所と民間の3研究所が挑んだ「プロジェクトA」の研究成果を民間に活用し、仕事の成果を8個の評価次元で捉えている。このモデルは「キャンベル・モデル」と呼ばれるものであるが、多次元である成果基準のなかから、線形構造分析を用いて、5つの成果基準に絞り込んで抽出したことに大きな意義がある。
その8個の評価次元とは、?専門業務習熟度、?一般業務習熟度、?文書・口頭コミュニケーション、?努力、?自己規律、?チーム成果の促進、?リーダーシップ、?経営管理である。この評価次元は、職能資格制度や成果主義制度にも反映されていることを思うと、かなり練られたものであることを裏づけている。
実際に人事制度を設計する場合には、職務基準書や職能要件書という形で、成果や行動、能力の要求水準を記述するという形で活用されている。しかし、現実には、制度が合理的に運用されていないケースが多いためか、新しがりやの企業が多いためか、それとも根本的に日本的経営には向いていないのか、完全に根づいているとはいいがたい。
しかし、前述のようにこれは制度の欠陥から生じる問題ではなく、制度設計の問題なのである。例えば、専門業務と一般業務を区別する基準すら明確にされていない場合もあるし、職務の基準とこれを遂行する能力との関係も曖昧である。つまり、「成果」が定義されていないため、結果に結びつく「能力」「行動」が描けていないことが原因なのである。
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