従業員のキャリア・デザインは、企業の経営戦略と連動して修正または変更されるという側面は否めないので、節目において個人の意にそぐわないキャリア・デザインが示されることもあるだろう。更に複雑なのは、家族の意向もキャリア・デザインに影響を与えるので、将来ともに順風満帆なキャリア形成は望むべくもない。
しかし、企業側としても個人のキャリア形成を疎んじているために、そうした転換をデザインするというのではなく、やむに止まれぬ事情があることも考慮しなければならない。そこで、今度は企業側が抱ええるキャリア・マネジメント上の課題について考えてみると、様々な従業員が望むキャリア・デザインとのギャップが浮かび上がってくる。
まず、第一に経営トップにとっては、後継者の育成という問題を常に抱えており、その育成プランは、リーダーシップ開発ともいうべき内容であることが求められることから、極めて限定的で、変革対応型のプランとなるであろう。つまり、こうした企業側のニーズは、一般の従業員のキャリア・デザインとは相容れないものである。
第二に、経営組織がフラット化し、管理職のポストが減少する傾向にあるなか、専門機能が交錯してより多機能であることが求められている。新旧の制度が並列して存在している以上、旧来の管理職ポストの不足感を和らげる施策も必要であるが、この場合も、本来の趣旨に沿ったキャリア・デザインは望めないことになるであろう。
第三番目の問題は、従業員のキャリア・デザインをデザインする経営幹部(リーダー)の適正の問題である。つまり、キャリア・コーチングやキャリア・カウンセリング能力が求められるから、これらに対応できる人材を社内で育成しなければならないが、ニーズの深さに比べ制度的には全く低レベルに止まっている。
第四番目に挙げたいのは、多様な雇用体系との関係である。部門間異動のような水平的異動、専門職としてのキャリア形成に止まらず、パートタイマーや出向、契約社員、再雇用など多様な雇用制度の中で、成果主義制度を始めとした固定的な尺度を基に、適正なキャリア・マネジメントを遂行することが可能なものかどうかである。
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