戦略的キャリア・デザイン

 夢の実現に向けて走り出すためには、それなりのモティベンションが必要であるが、その元となるコンピテンシーもまた必要なわけで、元々はどちらが先かは論理的に解明できるであろうが、途中経過で捉えるとそれほど問題にする価値はないように思われる。つまり、ある程度のコンピテンシーが蓄積されているから、モティベンションも高まる。
 こうした循環が加速されれば、それぞれが相乗的に影響しあいどんどん大きく膨らんでいく。そうした過程では、夢の大きさも場合によっては形もかなり変わってくることがあるかもしれない。そして、その夢が現実のものとなると、名実ともに夢ではなくなるわけだから、新たな夢が芽生え始めてきても不思議ではない。
 事実、われわれはそうした懲り性のない人生を歩み続け今日に至っている。人間は限られた一生の中では、全てのことを経験することはできないが、キャリアを蓄積し、成功体験を味わうことによって、自分のコンピテンシーの程度がいかなるものかを悟ると、その可能性の限界を超えて目標を設定したくなるようである。
 この目標がかなりハードなものであることを十分に認識している場合は、「夢」の範疇に入るであろうし、成功体験のパターンとコンピテンシーの程度、キャリアなどから逆算して、実現可能な領域内で目標を設定すれば、「夢」と呼ぶのは相応しくない。しかし、この場合でも、「夢」や「目標」のグレードや形は必ずしも明確ではない。
 企業の現場において、高い業績を上げた要因を分析してみると、コンピテンシーが高い、モティベンションも高い、かなり具体的な夢(目標)も持っていて、キャリアも豊であることは間違いない。しかし、これらが高い業績を上げる十分条件ではないことも熟知している。例えば、人事制度や企業文化なども大きな要素となることが知られている。
 第一、高い業績というのはどのような状態をいうのか、そして、それは組織のメンバー全員によって認知され、納得のいく個人目標にまで設定されているのかなどまで考慮すると、個人のコンピテンシーよりもむしろキャリアの方が業績に近い位置にあるかもしれない。したがって、企業にとってはこれをどのようにデザインするかが大きな課題である。