夢を持ち続けることでモティベンションが保てるか

 コンピテンシーを高めることと成果をもたらすことはイコールではないことを検証してきた。この両者の間でリーダーシップや本人の意欲などが微妙な反応を示し、成果に至るのではないかという仮説は成り立ちそうに見えるが、これを説明変数として成果を説明する回帰方程式をつくり、予測を行うわけには行かない。
 何故ならば、リーダーシップも本人の意欲も数量化することが困難であるため、数値で示される成果を事前に測定することはできない。そのことを多くの経営者は熟知しているからこそ、効果的な研修プログラムを策定することに前向きではないし、効果測定もおざなりなものになってしまうのではないだろうか。
 すなわち、高い成果をもたらすためには、「コンピテンシー」「本人の欲求」「リーダーシップ」「モティベンション」などがかなり有力なファクターであることは間違いないが、これらとは共通性のない独立因子が環境や企業文化などに影響され、共通因子とミックスあるいは融合して成果という結晶を作り出すと考えてはどうか。
 この場合の独立因子とは、身体的特徴とか几帳面な性格、手先が器用といったような本人の意欲とか、通常は職業とは直接関係の薄いものであるのに、何らかのきっかけで偶然に大きな成果に結びつき、それがやる気を起こさせる起爆剤になったという場合だってあり得ないわけではない。当然その逆のケースもあるはずである。
 しかし、動機づけを中心にパフォーマンスを考えると、こうした発想にはたどり着きにくいのかもしれない。成果をもたらすためには強い意志に支えられた行動が不可欠であるという論拠から離れられず、目標設定では動機が不十分であると感じるや、夢理論を持ち出し意欲と動機づけを説明しようとしているように見える。
 この理論の根拠となったのは、「この10 年以内にわれわれ人類は月に行く。それが容易だからではなく、困難だからこそできる」というアポロ計画におけるジョン・F・ケネディ元大統領の夢が大きかったがゆえに、米国国民の力を結集し、実現に至った。これは結構説得力がありそうにも思えるが、実現しないからこそ夢なのだという壁にもぶつかる。