ここまで展開してきた議論は、著名な学者や研究家が長年にわたって、築き上げた理論に対してことごとくケチをつける結果となってしまったことは、一実務家としてはとても心苦しい。しかし、中小企業にとっては永遠の課題であるといっても過言ではない、「能力」「行動」「成果」の関係を科学的に解明するには少し寂しいように思う。
企業の経営者は規模の大小を問わず、「企業は人なり」という大原則に則り従業員の能力向上のために研修を繰り返し行っているが、その成果となると、費用対効果で測定する限りでは、お寒い状況であると言わざるを得ない。これは、研修の内容や講師の資質、あるいは期待可能性(研修と成果)の読み間違いが問題なのであろうか。
社員研修を怠れば明らかに職務能力は低下する。しかし、どんなに研修に力を入れても、結局は従業員個々人の受け止め方によって、能力の蓄積やスキルアップにも大きな差が生じる。これを、「真面目?不真面目」「資質あり?なし」「意欲あり?なし」という軸で振り分けるのが合理的な分析なのかどうかということも問題である。
比較的効果があったと評価される研修は、上記の軸上でポジションをあらかじめ明らかにしておき、これに応じてリアリティのある問題を投げかけるという方法であった。だが、これとても一方的な評価軸で振り分けたものである以上、従業員個々人の心に届いているかどうかは測定しきれないというのが現状である。
これはちょうど、中小小売店やスーパーが折込チラシをやめると売上が落ちるので、やむを得ず惰性で続行しているのと似ている。スーパーの場合は最適な方法であるかどうかは別にして、情報提供という役割はある程度果たしているが、社員研修の場合は、受容度を無視していることが多く、単にあるべき姿を示しているに過ぎない。
すなわち、受講者の心に届かなければ、どんなに優れた内容の研修であったとしても、しきい値に達していなければ意欲を刺激できないので、動機づけに繋がることはないことになる。こうした状況は主催者側から見れば、受講者の意欲が足りないということになるのだろうが、期待と意欲のミスマッチが根本的な問題であることは疑わない。
コメント