コンピテンシーを高める土壌と学習方法?その3

 心理的限界を自ら設定しておきながら、あたかもこれが客観的で根拠のある装置であると思い込み、潜在的に保有している素質を磨こうとしないというのは、本人ばかりではなく、企業や社会にとっても資源の無駄遣いであるが、当の本人は大真面目であるところに問題がある。大げさに言えば人生観に関わる問題である。
 本人が自らの意思でこうした状態から抜け出し、持てる力を出し切るよう決意する(心理的限界を取り払う)ための方法は未だ確立されてはいないが、有力なヒントとなる理論は存在する。それは、心理学で言う「自己成就的予言」とブルームの「期待理論」である。この二つの理論から、「人はどんな時に動機づけられるのか」という問題に迫ってみたい。
 まず、「自己成就的予言」とは、自分が苦手だと思っていることがトラウマになり、文字どおり心理的に自分の能力を既定してしまいうことである。例えば、自分は人前で話すのが苦手だと思っていると、そうした場面になると、失敗するに違いないという圧迫感が必要以上に萎縮させてしまい、やっぱり失敗してしまうといった場合である。
 次に、「期待理論」というのは、人がある行動をとるとこを決めるのは、それを実行することにより得られると期待される成果と努力を計算し、その成功確率の連鎖により、実りが大きいと判断したときに動機づけられるという理論である。さて、この二つの理論がどのように活用すれば、いわゆるやる気を引き出せるのだろうか。
 「自己成就的予言」というのは、他人から見ればそれほど大げさな欠点ではないのに、本人にとっては切実な問題であるというものである。それはいわゆるコンプレックスであり、裏を返せば自尊心を傷つけられたくないという、自己防衛本能が過剰に作用しているからだと考えられるから、まず、それが異常であることを悟らせることが先決である。
 この解決策は意外と簡単である。例えば、先ほどのスピーチで言えば、始めに「話が苦手である」ということを宣言してしまう。そうすることで、元々過剰であった自己防衛意識が取り払われてしまい、平常心を取り戻せるわけである。つまり、俗な言い方をすれば、失うものがなくなったという開き直りが、安心感に変換されたということである。