コンピテンシーを高める土壌と学習方法?その2

 人間の安全装置とはいったいどういうものであろうか。これを解明するのに役立つ一つの実験があった。これはスポーツ医学に関するもので、ここで取り上げているコンピテンシーとは直接関係ないかもしれないが、心的入込みがパフォーマンスとなって、コンピテンシーを押し上げ成果をもたらすとすれば、ある種の共通性が潜んでいるとも考えられる。
 その実験とは、重量挙げの選手(確かローマオリンピックの金メダリストの三宅選手だったと記憶している)と一般の人とが、通常の状態と催眠状態でそれぞれ上腕二等筋の力を測定して、その変化の状態を調べるというものであった。その結果、重量挙げの選手は通常の状態と催眠状態で殆ど力に変化がなかった。
 しかし、一般の人は、催眠状態で発揮する力の方が通常の状態に比べ遥かに大きかったのである。催眠状態をどのようにしてつくるのかはよく解からないが、NHKの番組だったので一応信用できると考えている。測定したドクターの説明によると、これは明らかにトレーニングの効果であるということであった。
 つまり、私たちの体には多くの安全装置がついている。例えば、「頭痛がする」「出血する」「めまいがする」という状態がそれであるが、こうした状況はある種の警報であり、この装置が作動すると、疲労がたまっているので休暇を採るとか、病院で見てもらうなどという行動に出ることになる。これがいわゆる安全装置というわけである。
 そのドクターは、重ねて次のようにアドバイスしていた。トレーニングの効果は、「その人が元々持っている力を鍛えることで生理的限界を高めること、心理的限界を生理的限界に近づけることである」。このことは、人間の心理的変化や動機づけと大いに関係が深いことだけに、コンピテンシーに応用できるのではないかと考えている。
 普通の人は、そんなに頑張って働いたら体を壊してしまう。そうなったら、自分だけではなく家族にも迷惑をかけるので、ほどほどにしておくのが一番だと心理的にブレーキをかけ、許容水準を設定し、これを安全装置として組み込んでしまう。それが何時しか行動規範となって定着してしまい、学習意欲まで萎縮させてしまうのではないだろうか。