コンピテンシーという言葉が生まれたルーツはどういうところにあるのだろうか。学問的な諸説は別にして、企業活動において成果が上がる人とそうでない人との差はどうして生じるのだろうか。そして、その差の実体はどういうものだろうかという疑問から発生したのではないかと推察される。つまり、成果との因果関係を問題にしているように思われる。
そのため、成果をもたらした従業員の資質や行動を分析することで、抽出された因子を多く保有している人は企業活動において成果をもたらすに違いないという、いわば帰納法的論理が見え隠れする。こうした取り組みには敬意を評さざるを得ないが、人間の存在自体が不可解な面も多いので、論理的に体系づけるのは馴染まないようにも思われる。
しかし、行動科学的アプローチは、これまでそうした不可解な人間の心理に踏み込み、多大な貢献をしてきたことも事実である。こうしたジレンマの中でコンピテンシーをもう一度見つめ直すと、科学的でもあり現実の企業にも適応できそうなコンピテンシー理論も存在することに気がつく。それがコンピテンシー・ラーニング理論である。
この理論は、「経験による学習」「モデリングによる学習」「概念化による学習」という学習を通じて、従業員は能力と創造性を学習していくという理論である。つまり、この理論は、固有の保有能力よりも、学習によって能力や創造性を蓄積し、成果をもたらす能力(改善可能な能力)と捉えているところに特徴がある。
まず、「経験による学習」とは、ある活動(実践的活動)を行うことにより、職場での経験を通して試行錯誤を繰り返し、必要な知識や技能、仕事の進め方などを体得していく。次の「モデリングによる学習」とは、他者の行動や活動をみようみまねで体得することで、自分の中に一つのモデルを形づくっていくというものである。
もう一つの「概念化による学習」とは、獲得した情報や実践的経験を観念的に整理統合して、概念化することによって、新たな状況に適応するための行動や知識を習得する。これらの3つの学習は、正にわれわれが日常体験して実感していることなので、このように考えれば、コンピテンシーもかなり馴染みやすい理論に思えてくる。
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