コンピテンシーのモデル化への試み?2

 いま取り上げた2つのコンピテンシーのモデルは、職務給や職能給でよく用いられる職務分析や人事考課の項目とよく似ている。つまり、能力考課や情意考課(態度考課)、成果の内容をアレンジしたに過ぎないので、結局のところ現在好業績を上げているもが保有している能力を基準として評価しているよう見えるのである。
 これに対して、「経営理念型モデル」は、企業理念や価値を前面に打ち出し、その優れた価値表明が従業員の貢献や忠誠心を喚起することで企業文化を醸成する。すなわち、前者が現在の戦略ベースからのアプローチであるのに対して、後者は具体的な能力には依拠しない、価値ベース的アプローチであるというのが特徴のようである。
 そうだとすると、この「経営理念型モデル」は、経営者の価値観によって支えられる経営理念によりコンピテンシーが規定されることになるわけであるから、元々個人が保有している固有の能力はファンドメンタルな部分では評価されたとしても、かなりの部分は、経営者の価値観により偏った評価を受ける可能性もある。
 そうはいうものの、実際には経営者の偏見でコンピテンシーが歪められるということはないであろうが、問題は、華々しくデビューしたこの理論がますますとらえどころがなくなるような気がすることである。経営戦略やマーケティング戦略で使うコア・コンピタンスはそのまま理解できるが、ここでのコンピテンシーも本来は同じものであるはずだ。
 人が人の能力を評価することの難しさを考えれば、簡単にコンピテンシーを捉えることはできないと割り切った方が正解かもしれない。それは、よく言われる入社試験の成績と入社後の業績との関係の薄さからも窺い知ることができる。この場合の入社試験はコンピテンシーを大真面目で測定しようと試みているのである。
 組織の活力を底上げする手法は種々考えられるが、もとより一般化された方法などはない。どのようなアプローチを選択するかという問題以前に、その企業の文化、経営者の経営理念、従業員の成果を正当に評価する制度などが複雑に入り組んでいるため、まず、現状を受入れられるかどうかという難問に挑戦しなければならない。